【花嫁密着取材】“やらない”を決めて、自由に。 慣習も役割もいらない——等身大のふたりが選んだ一日

結婚式から10か月が経った今でも、「あの日の結婚式は本当に特別だったね」とゲストから声をかけられるという萌子さんと孝平さん。
もともとふたりは「絶対に結婚式を挙げたい」という強い気持ちを持っていたわけではありませんでした。
慣習にとらわれない自分たちらしい形を模索しながら、「やらない」ことをひとつひとつ決めていくことで見えてきた、“ふたりだからこそできる結婚式”。
等身大のふたりの選択は、今もゲストの記憶に深く残り続けています。

トキハナ編集部では、そんなふたりに結婚式を終えた今の気持ちをじっくりと伺いました。
準備期間のリアルなエピソードから、式後に感じたこと、そしてこれから式場探しをするカップルへのメッセージまで——
これから結婚式を考える方にとっても、きっと大きなヒントになるお話をお届けします。
(文・渡辺 優子)

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結婚式をやろうと思ったきっかけ。「大きな同窓会」にしたい理由

ふたりの出会いは高校時代でした。

披露宴のスタートとなるオープニング映像のロケ地にも母校を選び、「同じ高校だったゲストは懐かしがってくれて」と萌子さんは微笑みます。

結婚式を「絶対に挙げたい」という強い気持ちはありませんでしたが、同棲を始めてからの3年間で共通の友人との仲が深まったり、新たにお世話になる人も増え「大きな同窓会みたいに、みんなが楽しんでくれたら」という思いが少しずつ膨らんでいきました。

ふたりとも第一子ということもあり、両親や親族にも喜んでもらえる機会にしたいという想いが背中を押しました。

費用の不安と相談のリアル

最初に不安だったのは費用のことでした。

孝平さんは「結構お金がかかりそうだな」と感じていましたが、まず最初に訪れた大手相談カウンターで理想の結婚式の希望を伝えると「こだわりが強いですね」「この式場ならわがままを叶えてくれそうです」という言葉が返ってきました。

「自分たちって、こだわりが強いんだ……」と、その一言が印象的だったと萌子さんは振り返ります。
相談カウンターでいくつか候補をもらったときは、会場のスペック情報が中心となり、そこから自分たちの希望に合わせてどう会場を絞り込めばいいのか、イメージが湧ききらなかったそう。

大事な人のためにこそ大事にしたいことがたくさんあって、その想いを伝えたい——。

「できること、叶えられることって、難しいんだろうか?」と、不安が広がりました。

そんなとき出会ったのが、トキハナ。LINEで相談後にオンライン相談会に参加。

そこで相談をしているうちに、会場スペックというハード面だけではなく、一緒に結婚式を考えていくプランナーやスタッフの対応など、ソフト面を考えることも、実はとても重要なのだと気づけたそうです。

希望を実現できそうな会場や、ふたりに合うプランナーを紹介されると、「ここなら、自分たちらしい結婚式ができるかもしれない」そう思えたといいます。

「一日一件回るだけでも大変だ」と実感したふたり。

会場見学は2か所に絞り、見積もりはトキハナの「見積もりチェック」を活用。
第三者の視点で細かく確認し、「ここは交渉できるかも」という助言を受けながら進めました。

本当に無理なら断られるだろうという前提で交渉することで、悔いのない選択ができたそうです。

そして会場を決めた一番の理由は、困った顔をせず、まず“どうやったらできるか”を一緒に考えてくれるプランナーとの出会いでした。

自分たちに合う形を選ぶということ

孝平さんは、もともとジェンダーというテーマに強い関心があったわけではありませんでした。
「結婚式に限らず、“こういうしきたりだからやらなきゃいけない”という考え方があまり好きではなくて」と話します。

そのため、結婚式でも「必要ないと感じるものは無理に取り入れない」というシンプルなスタンスでした。

一方、萌子さんは大人になってから多様なジェンダーや生き方を持つ友人と出会い、視野が広がったといいます。

子どもの頃から、親には好きなものを選びなさいと言ってもらっていたので、女の子だからピンク、とかそういう固定観念を持っていなかったんです。

大人になっていろんな友人と出会い、“こんな形もあるんだ”と知ってからは、既存の結婚式や慣習的な結婚式に対しても違和感を覚えるようになりました。

腕を組んで新婦が入場する演出や、女性が男性に“引き渡される”ような進行、「花嫁の手紙」という形で、新婦だけが両親や家族に感謝を伝えるという慣習……。

「自分には合わない」と感じる場面がいくつもありました。

中でも悩んだのが衣装です。

お姫様っぽいドレスや、“女性はこうあるべき”という形に、無理に自分を合わせなくていいんじゃないかと思ったんです。

と萌子さんは語ります。
パンツスタイルのドレスを見つけたとき、“これなら私らしく立てる”と自然に思えたそう。

「女性だからこうでなきゃいけない」という考えから解放され、素直に「自分らしく選ぶ」という気持ちで準備を進められた瞬間でした。

こうしたふたりの考えが重なり、結果として「自分たちが本当にやりたいことだけを選ぶ」「必要だと思ってふたりともやりたいことなら、ふたりでやる」という今回の結婚式のスタイルにつながっていきました。

振り返ってみると、それは“ジェンダーフリーな結婚式”という言葉で表現できるものだったかもしれません。

最初からそう決めていたわけではなく、「自分らしくいられること」「ふたりらしくあること」を大切に、一つひとつ選び取っていった結果、自然と男女の役割にとらわれない——萌子さんと孝平さんだけの結婚式が形になっていったのです。

人前式という選択

挙式は人前式を選びました。

リハーサルでは腕を組んでの入場を提案されましたが、「新郎に守ってもらう」というより「ふたりで支え合って歩いていく方が私たちらしい」という感覚を大切にし、入場の直前に「手をつないで入場」に変更。

スタッフは「もちろんOK、おふたりの良いようにしてください」と快く受け入れてくれたそうです。

人前式だからこそ、“自分たちのやり方”を選べたと実感しました。

と萌子さんは語ります。

また、ふたりの親御様には披露宴の最後ではなく、その日の始まりとなる式の冒頭で、ふたりそれぞれからメッセージを伝えることに。

これから進んでいくふたりの道の前で、まっすぐ目を見て言葉を交わせたこと。
短い時間ながら、かけがえのない時間になったそうです。

“誓います”ではなく夫婦宣誓、ハグで結ぶ誓い

挙式のクライマックスは、キスではなくハグで誓いを交わす時間でした。

人前でキスはちょっと恥ずかしくて…。握手も考えましたが、自然な形がいいと思ってハグを選びました。

と萌子さん。

誓いの言葉は既成のものではなく、ふたりで作った「夫婦宣誓」。

数週間前からメモを重ね、直前に完成させました。

直前までバタバタの準備

この結婚証明書は、ゲストと一緒に完成させるスタイルに。

小さなギターピックにゲストが名前を書き、ふたりが最後に自分たちのピックを貼ることで完成します。

準備は直前まで大忙し。

ちょうど良いサイズ且つ、名前が書きやすいよう無地のピックを百枚単位で揃えるのが本当に大変でした。
物が前日に届くものもあって…

とふたりは笑います。

それでも「文化祭の前日がずっと続いているみたいで楽しかったです」とふたりは楽しみながら準備を進めていったそうです。

“敷かれたレールだからやる”じゃなく、“やりたいからやる”。
自分たちが心からそう思えることを選べたのが嬉しかったです。

と振り返ります。

オープニングのサプライズ

披露宴はオープニングムービーでスタートしました。

暗転した会場後方のスクリーンに映像が流れる中、ふたりはゲストの背後の扉からこっそりと入場。

曲のラストサビで孝平さんはギターを、萌子さんはピアノを弾きながら歌い出しました。

その歌声が後方から響き、振り返ったゲストがふたりの登場に気づくサプライズ演出です。

誰も気づかず、100人規模でも動線を工夫して“バレない”を叶えてくれました。

と孝平さん。

衣装チェンジがなくても、ときめきのある瞬間を生むことができました。

そして、スタートの挨拶は孝平さんだけでなく、萌子さんも一緒に。
最初からふたりでゲストをお迎えしたい」という思いが込められていました。

そして、ふたりでよく行く近所のバルの7歳の看板息子(孝平さんの親友)も参加。
乾杯の挨拶は彼にお願いしたことで、とても柔らかな雰囲気でパーティーが始まったそうです。

ケーキ入刀とお色直しをなくした理由

披露宴からはケーキ入刀とお色直しという、定番演出をあえて外しました。

ケーキ入刀をなくした理由は、ゲストにわざわざ席を立ってもらう頻度を増やすくらいなら、その分ごはんをゆっくり食べてほしいということと、ふたりもゲストも学生時代からの長い付き合いであること。

「だったら無理にやらなくていいよね」と話し合い、代わりにふたりとゲストが自由に楽しめる時間を多く取りました。

そのため、お色直しも行いませんでした。パンツドレスがとても気に入っていて、もう一着着たいと思わなかったのも大きな理由のひとつ。

私たちにとっては、この一着が特別でした。

友人とつくる式、そして縁をつなぐ式

ふたりは音楽が得意ですが、それ以外は「いろんな友人の力を借りた」といいます。

紙細工作家の友人が、夫婦宣誓のキーワードから発想した立体ウェルカムアートを制作。
歌の得意な友人は生演奏で盛り上げ、デザイナーの先輩はプロフィールスライドを手掛けてくれました。

おひらきの際に配ったのは、協力してくれた人を一人ずつ紹介する「スペシャルサンクスペーパー」。

可愛らしいイラストと一緒に「どんな人なのか」がわかるようにふたりからのコメントも添えて作りました。

この一枚をきっかけに、実際に友人のお店へ足を運んだゲストもいたそうです。

結婚式をその場だけにせず、結婚式の後も縁を繋ぎ続けたいと願う、ふたりらしいアイディアでした。

ゲストは「内容」を語り、親族も笑顔に

式後に寄せられた感想で多かったのは、「本当にふたりらしい」「あんなに笑ったのは久しぶり」という言葉でした。
もちろん料理も美味しかったけれど、それ以上に内容そのものが記憶に残った一日になりました。

親族の反応も温かく、ケーキ入刀などの定番を外しても不満の声は一切ありませんでした。
伝統を大切にする孝平さんのお祖母さまには、ややカジュアルすぎるかと心配していましたが、「ふたりからゲスト全員への感謝が伝わった」と喜んでくれたそうです。

元々「堅苦しくせず、カジュアルでリラックスできる日にしたい」としっかり説明していたのも、ご家族や参加ゲストの安心に繋がったのかもしれません。

やりたいことを叶えるのは“わがまま”じゃないと知った日

準備を振り返る中で、萌子さんと孝平さんが「今でも心に残っている」と語る言葉があります。

それは、式場探しの初期にトキハナ渡辺がかけた
やりたいことを叶えるのは、わがままじゃないですから。伝えたいことを伝えるのは結婚式の本質です
というひと言だったそうです。

最初は、結婚式には画一的なイメージがあって、“やりたいことが叶えられる式場があるのか?”と不安だったんです。

でもその言葉を聞いて、“自分たちが本当に望む形を目指していいんだ”と希望を持つことができました。

と萌子さん。

腕を組まずに手をつないで入場すること、誓いをキスではなくハグにすること——。
そのどれもが「わがまま」ではなく「ふたりが選んだ形」だと肯定してもらえたことが、結婚式の自由度を広げる大きな勇気になったといいます。

もしあの言葉がなかったら、ここまで自由に考えられなかったかもしれません。

式が終わった今も、あの日の言葉を思い出すたびに、自分たちの選択が誇らしくなるんです

と萌子さんは振り返ります。

これからのカップルへ

準備期間は「文化祭の前日がずっと続いているみたい」な日々でした。
得意分野を分担しながらチームになり、支え合って乗り越えた時間です。

夫(孝平さん)へのリスペクトが深まりました」「お互いの得意を活かせた」と萌子さんは語ります。

ふたりにとって、準備そのものが大切な思い出になりました。

これから結婚式を考えるカップルへのメッセージは、とてもシンプルです。

やりたいこと、やりたくないことをがあれば、まずは相談してみてください。
意外と自由にやらせてもらえるんです。

と孝平さん。

ふたりがそう実感したように、会場やプランナーは“できない理由”ではなく、“どうやったらできるか”を一緒に考えてくれる存在であってほしいと願っています。

編集後記

初めてお会いしたときに、萌子さんが語ってくれた「自分の足で立ちたい」という言葉が深く心に残っています。
一般的には、介添人が近くにいてサポートがつくことが多いですが、自分たちらしく自由に過ごしたいというふたりの意思を表す、象徴的な言葉だったと思います。

腕を組まずに手をつないで入場したこと、ハグで交わした誓い、ふたりで紡いだ夫婦宣誓、立体ウェルカムアートやスペシャルサンクスの一枚——。
それらはすべて、ふたりが「やりたいからやる」と選び取った証でした。

結婚式は、定番をなぞらなくても、ちゃんと伝わります。

そしてそれは、ジェンダーや慣習を否定するためではなく、ふたりの願いを叶えるために選んだ、ふたりだけの方法。

萌子さんと孝平さんの一日は、そのことを優しく、でも力強く教えてくれました。

これから式場を探すカップルや、迷いながら準備を進める誰かの背中を、きっとやさしく押してくれるはずです。

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